目次
子宮筋腫は妊娠に影響するのか?
子宮筋腫とは30歳以上の女性に多くみられる良性腫瘍です。
子宮の筋肉がこぶの様に変形する病態で、30歳以上の女性に多くみられる良性腫瘍です。
一般的には子宮の外側に向かって成長するタイプは妊娠に影響がないと考えられていますが、内側に向かって飛び出してくるようなタイプは不妊症の原因になると考えられています。
内腔に突出するタイプでは内腔の変形により着床不全が引き起こされるというのが最も考えやすい理由ですが、それ以外にも筋腫がある場合は子宮内膜が蠕動運動を起こしやすく、それによって着床不全が起こるという報告もあります。
子宮筋腫でも内腔に突出しないタイプでの妊娠への影響を調べた研究を紹介します。
Effect of type 3 intramural fibroids on in vitro fertilization–intracytoplasmic sperm injection outcomes: a retrospective cohort study
(タイプ3の筋層内筋腫が体外受精、顕微授精に与える影響:後方視的コホート研究)
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(18)30007-4/fulltext
これは中国のYan氏らが2018年にFertility and Sterility誌に報告した論文です。
この研究では151名のタイプ3子宮筋腫保有者と453名の子宮筋腫なしの対照群で体外受精、顕微授精の成績を比較しています。
ちなみにタイプ3とは上図のように子宮筋層内にある筋腫で内腔には突出していないものの、内膜に接しているタイプの筋腫です。
まず、タイプ3筋腫群と対照群のバックグラウンドについて比較しています。
上の表を見ると年齢やBMI、ホルモン値、体外受精になった理由など、両群間で特に差は認めないようです。
続いて、卵巣刺激方法と採卵結果について比較しています。
これをみると、タイプ3筋層群においてロング法、ショート法の割合が少しずつ低く、その他の刺激が多くなっているようです。
ただ、トータルのゴナドトロピン使用量や採卵個数、良好胚盤胞の個数は両群の間で差がありません。
子宮内膜に接しているタイプの筋腫は2cm以上だと妊娠率が下がる
上の表はタイプ3筋腫群と対照群における体外受精/顕微授精の結果を比較検討しています。
これを見ると、臨床妊娠が対照群では43.9%であるのに対してタイプ3筋腫群では27.8%と有意に低い事が分かります。
出産率でも34.4%vs21.1%とタイプ3筋腫群で有意に低くなっています。
流産率や早産率に関しては両群に差は無かったようです。
最後に筋腫の大きさがどれくらいから出産に影響を与えるのかを調べるためにROC解析を行っています。
上のグラフでSDは筋腫の最大径、TDは複数の筋腫の合計の径を示していますが、どちらも同じような分布をとっていて、2.0cmがカットオフ値になるようです。
これを基に筋腫の径が2cm以上と以下でそれぞれ比較したところ、2cm以上だと妊娠率が下がるのに対して、2cm以下だと筋腫が無い群と比較しても妊娠率は下がらなかったと報告されています。
子宮内膜に接する子宮筋腫は2cmを超えると妊娠に悪影響を及ぼす
・タイプ3の子宮筋腫(内膜に接する筋層内筋腫)は2cmを超えると妊娠に悪影響を及ぼす。
あくまで統計の結果になりますので、実際の臨床では2cmを超えるから即手術というわけではなく、今までの臨床経過を見ながら個々に相談していく必要があると思います。