不妊に「脂質・乳製品」は大きく関係します!

不妊や妊活に「脂質・乳製品」は大きく関係するんです

今回はアメリカ、ハーバード大学において全米18000人の女性看護師を対象に、妊娠するまでどれくらいの期間がかかったか、流産の有無を含めた健康状態、食生活、運動の記録、喫煙やその他の生活習慣についての情報を集めた(以下「看護師健康調査」)より脂質と乳製品についてご紹介します。

どんな脂質が身体に良いの?悪いの?

「看護師健康調査」によって、トランス脂肪酸は排卵や妊娠の障害となることがわかりました。

このトランス脂肪酸の摂取量を減らせば、妊娠するチャンスを高めることができ、同時に不飽和脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸を多く接種するとさらによい結果をもたらします。

どのような脂肪酸の種類が良いのか以下の表を参考にしてください。

脂肪酸の種類 原料例 摂取目標
体に良いもの 一価不飽和脂肪酸 オリーブ(オイル)、ピーナツ、ナッツの油、松の実 、ごま 、ピスタチオ 、落花生 、アーモンド 、カシューナッツ 、マカダミアナッツなどの種子、バター 総カロリーの10~15%

(22~27g)

体に良いもの 多価不飽和脂肪酸

(オメガ3脂肪酸・

オメガ6脂肪酸)

植物油、特にコーン、大豆、サフランオイル、クルミ、マグロや鮭、いわし、さば、はまち、さんま、ぶり、うなぎ などの脂肪性の魚類など 総カロリーの8~10%

(17~22g)

摂取を減らすもの 飽和脂肪酸 赤身の肉、無調整の牛乳やクリーム、ココナツやココナツ製品、ヤシ油 総カロリーの8%以下

(17g以下)

摂取を避けたいもの トランス脂肪酸 水素添加された植物由来の油脂を含む製品、マーガリン、ショートニング、ファストフード 2g以下できれば0g

ちなみにイギリスで行われた研究によると、妊娠中にオメガ3脂肪酸を豊富に含む海産物を日常的に摂る女性から産まれた子どもは、産まれてから4歳まで運動、社交性、コミュニケーションスキルが長けていたことが分かっています。また千葉大学の研究で受精卵の発育には脂肪が必要と言う研究論文が発表され「妊娠しやすい食生活」を心がけることは妊娠までの期間だけでなく、産まれた後にも影響を与えるといえます。

トランス脂肪酸には天然と水素添加された植物由来の油脂を含む製品があります。

天然にできるもの「バター・牛乳・牛肉」
天然の不飽和脂肪酸は、通常シス型で存在します。しかし、牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。天然のトランス脂肪酸は微量なのであまり気にしなくても良いと思います。

油脂の加工・精製でできるもの「スナック類・クリーム・パン・ドーナツ・マーガリン」
常温で液体の植物油や魚油から、半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つに「水素添加」があります。水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増えますが、これによってトランス脂肪酸ができることがあります。

 

トランス脂肪酸が多く含まれる食品

トランス脂肪酸の濃度は、揚げ物の約7割、調理冷凍食品の約9割です。食品100 g中0.3 g未満の場合は、トランス脂肪酸が実際にゼロでなくても消費者庁がトランス脂肪酸の含有量を「0 g」と表示できるとしているので注意が必要です。部分的に水素添加した油脂を用いて作られたマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツ、クッキー、シュークリームなどの洋菓子、揚げ物などに、トランス脂肪酸が含まれているものがあります。

食品名 トランス脂肪酸含有量(g/100g)
マーガリン、ファストスプレッド 7.00
食用調合油等 1.40
ラード、牛脂 1.37
ショートニング 13.60
ビスケット類

(ビスケット・クッキー・クラッカー・パイ・半生ケーキ)

1.80
スナック菓子、米菓子 0.62
ケーキ、ペストリー類

(シュークリーム・スポンジケーキ・ドーナツ)

0.71
マヨネーズ

(サラダクリーミードレッシング・マヨネーズタイプ)

1.24
食パン・菓子パン 0.16~0.20

乳製品って控えた方が良いの?悪いの?

脂肪の摂取バランスという観点から言えば、飽和脂肪酸を摂りすぎないことが大切なのですが、乳製品に関しては脂肪分無調整の牛乳やヨーグルト、チーズ、アイスクリームは排卵障害の不妊症リスクを低減し、反対に低脂肪の牛乳やヨーグルトはリスクを高めます。

「看護師健康調査」では、乳製品の総摂取量と排卵障害の不妊症リスクとの関連を調べ、摂取量に不妊症のリスクの違いは発見されませんでした。

しかし、乳製品の種類別に見てみると、低脂肪の乳製品を多く摂る女性ほど排卵障害の不妊症リスクが高く、成分無調整の乳製品を多く摂る女性ほどリスクが低かったのです。

なぜ低脂肪の乳製品を摂ると排卵障害のリスクが高まるのか?

現在の牛乳は50年前に比べてホルモンの含有量が増えていることが知られています。

問題は脂肪分を取り除く過程でエストロゲンやプロゲステロンなどが除去されアンドロゲンやインスリン様成長因子などが存在することになります。

その結果、低脂肪の牛乳を飲むことで男性ホルモンが過多になることで、卵胞の成熟や排卵の障害のリスクが高まることにつながるのです。

低脂肪の方がヘルシーで健康に良いイメージがありますが、排卵障害を持つ女性にとっては妊活に逆の効果をもたらしてしまうので自分の体質に合った摂取の仕方を見極めることが大切です。

<参考文献>
ジョージ・E・チャヴァロ/ウォルター・C・ウィレット/パトリック・J・スケレット:妊娠しやすい食生活~ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法~,日本経済新聞出版社