妊娠における糖鎖の役割

不妊に糖鎖不足が関係?

不妊の原因は、配偶子(精子と卵子)の形成、受精そして受精卵の着床にいたる一連の過程での異常にあり、これに糖鎖が関係している可能性が指摘されています。生命の誕生には、精子と卵子の出会いに始まる受精が第一段階ですが、これには糖鎖が非常に重要な役割を担っています。
卵子の表面は卵子を保護する卵黄膜に覆われ、精子がこの卵黄膜を突破して卵子にたどり着かなければ妊娠にいたりません。
精子と卵子の表面には糖鎖が付いていて、鍵と鍵穴のようにピッタリ一致して、始めて精子は卵黄膜を突破し卵子と結合でき受精が完成します。
先進国では夫婦の少なくとも10組に1組は不妊に悩み、特にわが国では社会問題化している少子化問題の一解決策として、不妊症の克服は重要な医療課題になっています。

妊娠に関わる糖鎖の役割についての解説

精子形成に必要な糖鎖…

精子は、精巣にある精細管の中で作られます。

生殖細胞の幹細胞(未分化精原細胞)は、精細管内の刺激により分化精原細胞になり、精子形成がスタートします。
そして、精原細胞が分裂を停止して、分化しはじめると精母細胞になります。
精母細胞は支持細胞のセルトリ細胞に接着しながら、精細管側から内腔側へ移動し、2回の減数分裂を経て、半数体の精子細胞になります。
その後、形を変えて鞭毛を持つ精子になって精細管→輸精管→精巣上部へと移動します。

ところで、精巣には特異的な硫酸化糖脂質のセミノリピドがあり、精巣の糖脂質の殆どを占め精母細胞の初期に合成されます。
このように、精巣には特異的な糖鎖があり、生殖細胞とセルトリ細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たしています。
したがって、糖鎖に問題があると卵子と結合して受精卵を作るしっかりとした精子が作られなくなります。

受精を左右する糖鎖…

受精プロセスでは以下のように精子と卵子間で様々な相互作用が起こっています。

膣内で放出された数億個の精子は弱アルカリ性ですので、酸性の膣内では約半数の精子が死滅します。
子宮内と卵管内はアルカリ性ですので、子宮内にたどり着いた精子は数日間生きています。
その後、卵管内を移動してきた数十から数百個の精子は卵管膨大部で卵丘細胞層によって囲まれた卵子と出会います。
精子はヒアルロン酸で架橋されている卵丘細胞層を酵素(ヒアルロニターゼ)で分解、通過し、卵子を被っているタンパク質層の透明帯と結合します。
その後、精子は透明帯による刺激で形を変えて加水分解酵素によって、透明帯を分解しながら通り抜けて卵細胞膜と結合、融合し受精が完了します。
透明帯は複数の糖タンパク質で構成され、この糖タンパク質が精子と結合、精子の形態変化、多精阻止など重要な役割を果たしています。
以上のように、糖鎖(糖タンパク質)は受精の各プロセスにおいて、きわめて重要な役割を担っています。
※透明帯の糖たんぱく質の構造は種固有ですので、人間の精子は他の哺乳類の卵子とは結合しません。

受精卵の着床における糖鎖の役割…

子宮内膜への受精卵の着床プロセスは、胚と子宮内膜上皮との接着→間質への浸潤→胚全体が内膜に包まれて定着します。

受精卵の着床が成立するためには、子宮内膜と胚のそれぞれの条件が合致する必要があります。
子宮内膜は卵巣ホルモンにより増殖期→分泌期→月経を繰り返します。

そして、分泌期の中の胚受容期にのみ胚を受け入れることが可能となり、この時期に子宮内膜上皮にL-セレクチンと結合する糖鎖が増加します。
一方、胚は胚盤胞の段階で着床します。
胚盤胞のない細胞は、将来の胎児となる胚結節になり、外細胞は将来の胎盤となる栄養膜細胞に分化します。
胚盤胞表面の栄養膜細胞によって発現したL-セレクチンと糖鎖リガンドとの結合によって、着床の初期における子宮内膜上皮と胚の接着が可能となります。

以上のように糖鎖が正常でないと、妊娠は完成しないということ、そして母体の糖鎖(正常に機能しているか否か)がその後の胎児の成長に大きく関わることも解明されています。

※以上のことから妊娠を望むご夫婦には、ご夫婦での糖鎖栄養素(たんぽぽ茶ショウキT-1)の摂取をお勧めしています。