精巣は熱に弱い!

男性不妊の原因は陰嚢の温度?

「卵巣はお腹の中にあり、精巣は何故お腹の外にあるか?」

これは、精巣の温度を下げるための必然的なしくみであると考えられています。
幼少時の持続する高熱は精子形成を生涯において障害すると考えられています。
大人の高熱も一時的な精液所見の悪化を引き起こします。

9名の健常男性(21~35歳)に対して、40分歩行した後にエアコンを使用しないで160分車を運転してもらい、両側の陰嚢に温度センサーを装着し2分毎に陰嚢温度および気温を計測しました。

左右陰嚢温度は運転開始から徐々に上昇し、2時間後には1.7~2.2℃上昇しました。

本研究は車の運転というライフスタイルが男性の生殖能力に影響している可能性を示唆します。

近年、男性の精子形成が低下しているという報告がいくつかあり、ライフスタイルや環境ホルモンがそのリスクファクターと考えられています。

近年のライフスタイルに長時間の車の運転があり、運転の姿勢が陰嚢温度を上昇させる可能性が指摘されています。

フランスの研究では、仕事上毎日3時間以上車の運転をする男性は、妊娠するのに長期間を要するというデータがあります(1996)。

イタリアでは、タクシー運転手は正常形態の精子が少ないという報告(1996)があり、ハンガリーでは、不妊症のカップルには運転手が多く、運転年数に比例する(1979)とされています。

運送業の男性は精子運動率が低く、精子数も少ない(1994, 1986)ことが知られています。

1時間運転したら、休憩して少し歩くと陰嚢温度はすぐに低下しますので、ぜひお試し下さい。

「精巣(睾丸)は熱に弱い」ことを男性は肝に銘じて!

陰嚢(精巣、睾丸)温度の上昇は男性不妊のリスクファクター

下記の論文は、ノートパソコンユーザーの陰嚢温度上昇について示したものです。
29名の健常男性(21~35歳)に対して、両側の陰嚢に温度センサーを装着し3分毎に温度を計測しました。
室温は22℃、衣服は同一のカジュアルウエアとし、60分コースを2セット(電源ON or OFFのノートパソコンを膝に置く)、それぞれ異なる日の同一時刻に測定しました。
測定開始の15分前より立位で待機し、椅子に腰掛けて測定しました。

左右陰嚢温度は電源ON(2.6~2.8℃) or OFF(2.1℃)にかかわらず上昇し、電源ONで有意に高いという結果でした。

ノートパソコンから発する熱のみならず、座位により陰嚢温度が上昇します。
ノートパソコンによる陰嚢温度のさらなる上昇が、精子形成に悪影響を与える可能性があります。

不妊症の半数は男性不妊

精巣機能は精巣温度が体温の2~4℃低いことが望ましいと報告されています(1998)。

高温が精子形成障害になることは、精策静脈瘤や停留精巣で証明されています。
陰嚢温度の上昇は発熱性疾患、停留精巣、職業上の高温作業、熱い風呂、サウナ、タイトな下着、座位、運転手、密閉性の高いおむつ、などで認められ、不妊要因として考慮されるべきものです。

ノートパソコンのことを欧米ではラップ(膝)トップ(上)といいます。
膝の上で使うためですが、日本では机の上で使われる事が多いので、事情は異なります。
ノートパソコン内部の温度は非常に高い(70℃)ので、このような研究が行われたわけですが、座っただけでも陰嚢温度が2℃も上昇することを重視して欲しいと思います。

「精巣(睾丸)は熱に弱い」ことを男性は肝に銘じて欲しいと思います。

精巣(睾丸)の温度は陰嚢の温度に比例

下記の論文は、下着の種類と活動性による陰嚢温度への影響を示したものです。
座位と歩行時の各種下着着用による陰嚢温度の違いを検討しました。
50名の健常男性(18~45歳、BMI 平均23.8、精巣容積平均14mL)に対して、両側の陰嚢に温度センサーを装着し1分毎に温度を計測しました。
室温は20℃、全員1日の同一時刻に測定を開始し、シャツとズボンは身体にフィットした綿に統一しました。45分コースを6セット(トレッドミル歩行3km/hr or椅子に座る)x(タイト下着orルーズ下着or下着なし)行いました。
多変量解析により陰嚢温度は、タイト下着(+0.3~0.5℃)>ルーズ下着(+0.5~0.6℃)>下着なし、座位(+1.6~2.6℃)>歩行、左陰嚢(+0.1~0.4℃)>右陰嚢、でした。

下着の種類による温度差は歩行時に顕著であったため、歩行の際(活動時)には特に注意が必要です。

精巣の熱刺激は精液所見を悪化

健常男性の陰嚢温度は、着衣、通気性、血流に依存するとされています。
過去にも同様な検討はありましたが、サンプル数が10~20名と少なく、条件が必ずしも一定でありませんでしたので、本研究ほどの有意な差はみられていません。

男性は、下着はゆるめで、通気性をよくし、座位を長時間とらないことが大切

歩けば比較的すみやかに陰嚢温度は低下するので、座っての仕事の合間に少し歩いてみるとよいでしょう。
航空機内でも同様で、エコノミークラス症候群の予防にもなります。